「出会えた人出会えなかった人 美樹克彦その1」

 数年前に亡くなった高校の同級生のO君がある日僕にこう言った。「おまえ歌謡曲が好きなんだろう。美樹克彦って知ってるだろう。会わせてやるから今度来いよ」へそ曲がりのぼくはいいよ、興味ないよ。O君は、知らないんじゃないのか?そんなことないさ。「花はおそかった」(作詞:星野哲郎作曲:米山正夫)「かおるちゃん おそくなってごめんね」を歌った奴だな。昔は目方誠っていったんだぜ。ひけらかしてみた。それっきりO君は美樹克彦の名前を出さなくなった。そのうちO君が急死。O君の葬式のとき、なぜかこれで美樹克彦に会うことはなくなったな、と思った。

 それから数年後、縁があって美樹克彦を紹介された。飲みそうな顔をしながら二人とも完璧な下戸。コーヒーだけで何時間も歌の話をした。「歌をなんとかしなければと思っている」と僕の胸の内を明かすと、話はどんどん盛り上がる。何か一緒にやりたいね、という話になったとき、美樹克彦は「まだちゃんとした曲になっていない歌がある。実は星野哲郎先生に詞をお願いした歌なんだ」と話した。星野哲郎には僕も相当な思い入れがある。聞けば「一生のうちに一回しか咲かない高山植物があるんです。花一花(はないちげ)という題で詞を書いてください」と植物図鑑持参で頼んだという。できた、という電話で詞を受け取り、それに美樹が曲をつけたという。
花は遅かった
花は遅かった/美樹克彦(1967年)

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