「課題曲 花一花 その2」

 美樹克彦の花一花を何度も聴き続けた。その結果、これを歌うべきなのは八代亜紀ではないかと勝手に結論を出してしまった。美樹克彦にも相談せずに、八代亜紀の事務所を訪ね、旦那さんで社長の増田登さんに「これは国民運動だと思っています。歌っていただけませんか」とお願いした。なんと答えは「国民運動ですね。それなら歌いましょう」。天にものぼる気持ちで、美樹克彦に電話した。美樹は絶句したように思えた。レコーディングの日、八代亜紀は明るい調子で現れた。もうすでに覚えていたらしく2度ほど歌ってそれから録音に入る。ぼくらには予算がないのですべて費用は先方の負担。レコーディングのスタジオを覗いて驚いた。ヴァイオリンだけで14人もいる。カンテレなんとかいうフィンランドの楽器も入る。ギターには名手で山崎ハコの旦那の安田裕美がいた。さすがに八代亜紀ともなると違うな、と感心するばかり。想像していた歌い方とまったく違った。あの暗く重たい詞を、明るくはずむようにして歌う。メロディーは淡々としていてヤマ場があまりない。それを八代は力まずに、それでいてリズミカルに歌う。ジャズとかブルースとかさまざまなジャンルの歌と取り組んできた八代亜紀の持つ歌の力がすべて出ているような歌にしあがった。

 「レコーディングで身体がぞくぞくっとしたのは今日が初めて」と八代はつぶやいた。八代亜紀がまだ銀座のクラブでジャズを歌っていた頃、作詞家の星野哲郎が何度も客として来ているのを見たという。当然、そのころからの知り合いだったが、星野の曲が八代には一つもない。ことしは星野の7回忌。これもめぐり合わせだな、と思う。この歌を何とか活かそうというのがそもそものきっかけで、こころの歌謡選手権大会は「課題曲制」になった。天国の星野先生、応援してくださいね。

 

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