「課題曲 弓」

 美樹克彦は歌手であり作曲家でもある。僕は作詞家としての美樹克彦の才能は端倪すべからざるものがあると思っている。課題曲用にと彼から渡された曲の中にどきっとする2曲が入っていた。1曲はこの「弓」である。もう1曲は「酒処 未練」という曲だった。どちらも詞も曲もいい。ずいぶん悩んだ。結局、弓で歌い手を探した。男の歌手にも当たったが、話が進まず、結局、小松みどりがいいと美樹克彦が推薦し、決まった。僕はお姉さんの五月みどりとは10年ほどのつきあいがある。TBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」で毎週水曜日に一緒になった。この姉妹、ほんとによく似ている。顔も声も雰囲気も。なによりも他者への気の使い方がそっくりだ。

 編曲は若草恵。この人の手にかかるとまるで上質なフランス映画のような洒落た歌に変身する。「心の弓を 引くだけ引いて 番(つが)えた矢です 受け止めて 刺さったままで 重なるように 落ちてゆくのに迷いはないわ」。女の情念をここまで表現するかというような美樹の詞。「天城越え」の作詞家故吉岡治もびっくりというほどの作品である。小松みどりはことし歌手デビュー50周年。記念の年に「いままで出会ったことのない曲調の歌に巡りあえて、難しかったけれど幸せです」と感想を述べている。

 

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