「課題曲 たからもの」

 作詞作曲ともにシンガーソングライターの山崎ハコである。ハコとクミコ、この二人が顔合わせしたレコーディングは初めから緊張感に包まれた。ハコはフォークで、クミコはシャンソンで長い経験をともに積んでいる。当然のことながら歌の解釈は個人差がある。僕とハコの間では、歌うのはクミコ以外にないね。ということで合意はしていた。しかしながら解釈の部分では火花が散る。見ていてハラハラする場面もあった。「私は山崎ハコじゃないから」とクミコが言う場面もあった。たしかにハコがデモ歌唱で歌ったこの歌の雰囲気と、クミコの声で歌うのとではかなりの違いがある。ただ聴いていてクミコの声、歌い方にはいくらか明るさがあるので、結果としてこの人選は間違っていなかったなと思っている。

 この歌の主人公の女性は一人暮らしで最果ての町に住んでいる。そして春が恋しい、花が恋しい。笑顔恋しいと思い、結局は「あなた恋しい」になる。あなたはすでに亡くなっていて、そのあなたとの「胸の中の思い出だけがたからもののようです いまでは」。切々とした思いが伝わってくる。そういう哀しい歌なのである。そのやりきれないほど哀しい歌をクミコは独特の歌い方で聴く人の心に飛び込んでくる。緊張感が生み出した名曲である。

 

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