「課題曲 スター その1」

 人間は必ず老いる。顔も変われば声だって変わってくる。どうも歌の世界は老いというものを認めたくないようだ。還暦を過ぎてもデビューのころのような衣装、髪型、メイク、そして声も昔の“全盛期”を追い求めている。こういう傾向はおかしいとずっと思ってきた。深い皺にはその人の人生が刻み込まれている。薄くなった頭髪は風雪に耐えた歳月の証である。声だってそうだ。昔の若いころの声が出ないなら、いまの声で歌えばいい。

 いろいろな歌手を見てきてずっとそう感じていた。辛酸をなめてきた人間でなければ歌えない歌があるはずだ。若ければいいというものではない。フランク・シナトラのマイ・ウエイや森繁久彌の知床旅情はデビューしたての歌手が歌ってもまったく味が出ないだろう。「もういいじゃない これから先も スター それは無理さ」という歌詞がまず浮かんだ。それからは自分でも驚くほど言葉が続いた。作詞した僕はこの詞が演歌風の曲になるのかそれともポップスなのかまったくわかっていなかった。課題曲の詞を考えているころ散歩していた霊園で、偶然、忌野清志郎の墓をみつけた。ファンからの花に囲まれて、いかにも彼にふさわしい華やかなお墓だった。そのとき、ペンネームを「清志郎」にしようと決めた。

 どんな曲になるのか。作曲家の若草恵にお願いした。「うーん、これはシャンソンの世界だね」と彼は言った。シャンソンのごとく語りかけるような曲ができてきた。さて、この歌をだれが歌うのか。

 

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