「課題曲 スター その2」

 まず、歌うのは男の歌手なのか女の歌手なのか。還暦を過ぎたかつての女性スター歌手を「もういいじゃないか」と引退を促しているのは男。だからといって男の歌手が歌うとあまりにもリアルな歌になってしまう。しかしながら年配の演歌の女性歌手だと自分のことのようになってしまう。それなら、ということで男性歌手なのだけれども女性のような声で歌う歌手の名も出た。なかなか決まらないのでしばらくの間、歌うのは「覆面歌手」ということにしておいた。昔はたとえば初代コロムビア・ローズが覆面歌手だったように、ときどき出てきた。韓国ではいまでも覆面で出てくる歌手が少なくない。覆面にしておけば、だれに歌ってもらっても説明はつく。話題性もある。が、そういうわけにもいかない。何しろレコーディングの日が迫っている。実は、と若草恵が出してきた歌手の名前が「ケイ潤子」。シャンソンも歌っている。僕と若草恵と同じ山形県出身なのですぐにOK。レコーディングで彼女の低い声を聴いて、この人以外にないと確信した。「初めはこんな残酷な歌詞の歌は歌えないと断りました」と彼女はいう。「薬と酒を交互に飲んで」とか「とっかえひっかえ男を変えて」とかたしかに歌にはなじまない乱暴な言葉がある。それをまるでフランスの映画音楽のようにしてくれた編曲家。この歌で挑戦しようという人が増えている。

 

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