「課題曲 Espelho 鏡 その1」

 この歌も「清志郎」の作詞家名で僕が作詞した。山崎ハコに「きょうだい心中」という曲がある。「呪い」という歌とともにハコの代表曲だ。「国は京都の西陣町で 兄は二十一その名はモンテン 妹十九で その名はオキヨ 兄のモンテン 妹に惚れて」(作詞不詳)。兄と妹が結ばれるという話である。妹は恋人の虚無僧を殺してくれれば末は女房に、と。兄は虚無僧を殺す。最後は兄が妹も殺す。

 恋した人が実の兄妹、それもそのことを知らずに結ばれたら。そんなことを考え、歌にした。どこかにハコの「きょうだい心中」が頭の隅にあったと思う。この重いテーマを物語のあるファド(ポルトガルの民族歌謡)に仕上げたいと考えた。やがて兄と妹であることがわかり、二人は別れ、別の人生を生きる。互いにどこでどのように生きているのか死んでしまったのかもわからない。兄は妹への別れの手紙に血で「死ぬなよ、絶対死ぬなよ」と書く。死ぬほどつらい別れと残酷な現実。つらかったあの頃を妹は思う。あの人はどうしているだろうか。鏡に映る自分の顔に、いつか兄の面影を追い求めている自分がいる。長い歳月を経て、いまは「少しばかり 甘い思い出」なのである。

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