「課題曲 Espelho 鏡 その2」

 課題曲13曲の中で、この歌だけは歌う人を決めてから曲作りに入った。西山ひとみ。この人のコンサートを聴いて、ファドを歌える人だな、と感じていた。ややかすれた、ときに野太い声は、この重苦しいテーマを歌うのにぴったりだと考えた。レコーディングまでの間に、作曲家、編曲家、それに歌手と僕の間でいろいろとやりとりがあり、その結果、歌詞も変わったし、曲名も変わった。僕が最初につけた題名はそのものすばりの「兄妹(きょうだい)」だった。しかし、初めから「結ばれてはいけない人」が兄だとわからないほうがいいということで、題名も変えた。ポルトガル語の鏡である。

 この曲は1番2番3番という歌詞の硬性になっていない。大衆歌謡が3番構成になっているのは日本と韓国ぐらいでシャンソンでもジャズでもましてファドでもストーリーが展開する構成になっている。したがって歌うには曲と歌詞をすべて覚えなければならない。実はあえてそうしたのである。だれもが当たり前だと思うことを実験として一度壊してみたいと考えたのである。そのせいか、難しいという声がたくさん届いている。聴く人や歌う人に迎合しない歌を作る、というのも僕たちの大会開催のねらいの一つなのである。

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