『Espelho 鏡』
日本のファドが誕生した瞬間

この作品は難産であった。「兄妹の恋」という禁断のテーマ。
最初は穏やかなメロディがついてきた。白木先生(共同編曲の白木勉先生)の仮アレンジもゆったりとした感じ、タイトルは「兄妹(あにいもうと)」、これをポルトガル民族歌謡「ファド」のようなテイストにしたいというのが作詞者、作曲者の要望であった。
しかし、この曲を受け取った西山ひとみさんとレコード会社の社長でプロデューサの亜樹さん(ホリデージャパン社長/亜樹広俊さん)は正直悩み顔。この作品のテーマがあまりにも重く、日本語としての表現も難しいと・・・。
その後、アーティストサイドからインパクトのある提案があった。「タイトルを変えてほしい」「兄妹だということがすぐにわからないように、最後にわかるようにしてほしい」というものであった。そして生まれたのがポルトガル語の『Espelho(エスペーリョ) 鏡』。
次はアレンジ。ホリデージャパンのスタジオに押しかけギタリストでもあり名アレンジャーの藤井弘文氏と膝詰めのやりとり。お互い意気投合するのにさほど時間はかからなかった。

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「藤井さん、これシンプルにギターとベース、パーカッションくらいにしませんか!?」
「もちろん私もそのつもりですよ!」
藤井さんのリードで、ファドとスパニッシュなシャンソンの融合という形で、シンプルでありながら深みのある素晴らしいアレンジがつぎつぎとでき上がっていった。この様子をそばでずっと目を閉じて口ずさみながら、西山さんは自分の体の中に取り込んでいくように物語を組み立てていった。最後に、ジプシーサウンドを奏でるバイオリンが入り、この作品が持つ悲哀・哀愁を引き立てた時、西山ひとみさんの目が微かに潤んだのを感じた。

そしてレコーディング。「西山さん1テイク目を録りましょうか」スタジオからのかけ声ではあったが、ボーカルブースの中の彼女からはすでに10テイクくらい歌い込んだ濃密な表情が伺えた。こうして、みんなで少しずつ作り上げていった作品のレコーディングの結果は言うまでもない。
日本生まれのファドが誕生した瞬間であった。

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2016年2月19日 ホリデージャパンスタジオ

レコーディング映像

試聴

Espelho 鏡

作詞:清志郎/作曲:中里哲也/編曲:藤井弘文・白井 勉/歌唱:西山ひとみ

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